研究概要

research_img01

水族保全学研究室は、保全生物学、なかでも遺伝学的手法を用いた水族(水生生物)の保全に関する教育研究を目的として2004年10月に設立された研究室です。
生物資源を保全するにあたり、生物種を複数の地域集団の集まりとしてとらえることが必要です。また、その集団の個体数を維持することはもとより、集団の保全の指標となる遺伝的多様性の程度についても明らかにしなければなりません。
当研究室では、個体の持つ遺伝的多型現象を検出するためにマイクロサテライトDNA、ミトコンドリアDNA多型等の高感度のDNAマーカーを用い、野生集団の個体群構造や個体識別に関する課題、人工飼育の個体の放流に関する課題、養殖魚の育種に関する課題等、絶滅危惧種から有用水産対象種に至る水族の遺伝的特性を評価し、具体的な保全管理を行うことを目指しています。

主要研究テーマ名 : DNAマーカーによる水産育種および放流種苗の追跡

魚介類の育種において、有用な形質をもつ系統の作出は極めて重要な課題であるが、それらの遺伝形質の評価を行うことは、環境要因と遺伝要因が同時に検出されることから困難である。
この研究では、環境の差を最小化するように同一水槽に飼育し、DNAマーカーにより親子および個体識別を行い、遺伝要因のみを取り出すことで、形質を評価し、優れた育種系統を作出することを目指しています。
一方、各地で行われている種苗放流事業においても、同様の個体識別法により、漁獲された個体の中から放流魚を検出し、放流効果を解明するとともに、放流種苗の移動動態を明らかにすることを目標としています。

research_img02

主要研究テーマ名 : 希少魚における遺伝的多様性保全

生物の多様性を保全するには、生態系の多様性や種の多様性だけでなく、遺伝的多様性についても考慮する必要があります。遺伝的多様性の減退は、近交弱勢や環境の変化に対する適応力の低下を招く可能性があるからです。また、最近では外来個体による在来個体群への遺伝的撹乱についても調査する必要があります。
この研究では、希少魚の遺伝的多様性について高感度の核DNAおよびミトコンドリアDNAマーカーを用いて遺伝的特性を評価し、遺伝的多様性の面からそれぞれの種および個体群について具体的な保全管理を行うことを目指しています。

research_img03

主要研究テーマ名 :種の生物学的特性の理解

生物種を保全するにあたり、対象とする生物種の生態について深く理解する必要があります。しかし、水中に生息する魚類は、観察が難しく、配偶パターンや繁殖様式を調べるのが困難である場合が多くみられます。
この研究では、遺伝マーカーを用いた個体識別や親子判別手法を用い、胎生魚のウミタナゴ科魚類の一腹仔が複数の父親に由来することを明らかにするなど対象種の生物学的特性を理解することを目指しています。

research_img04

PAGE TOP